船舶用焼玉エンジン復元の紹介

今回は船舶用焼玉エンジン復元の紹介です。
兵庫県明石市において工場の一角で復元整備することになりました。瀬戸内海に面した港地区、遠方に明石海峡大橋が見えまた古い町並みが残されております。
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2021年7月から船舶用焼玉エンジンの復元整備に取り掛かりました。工場の一角の常磐の上で整備します。

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(写真下:焼玉エンジンは東京都港区の安全自動車製で単気筒 15馬力 回転数500 ピストン径200 ストローク215 製造年 昭和20年1月。解体前の状態。倉庫に何十年保管されていた物で完全に油が切れている。外観は大きな損傷はないように見える。本体の台は木台で間に合わせに付けて物のようなので鉄材で作り換えることにする。)

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(写真下:本体の側面にあるエァーダンパーの動きが悪く、位置ずれも起こしていたため、エァーダンパーを取り外し、シャフトとレバーの摩耗が激しいため作りなおす。エァーダンパーの中央にあるピストンピンへの油の供給部品とパイプが壊れていたため、作り替える。)

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(写真下:ヨークロッカアームのベッカー付け根に、過去に行った溶接の後があるが、外れかかっている状態。鋳物の材質は一度折れたものに後からの溶接はなかなか正確には付けにくい。そこでヨークロッカアーム本体の図面を引いて作り直すこととする。安全自動車工業製の製品で、精巧に出来ている。しかし古いタイプのスエーデンボリンダー製を完全にコピーしたものと思われる。)

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(写真下:プランジャー式燃料ポンプと燃料ノズル。)

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(写真下:各部に油を供給する注油器。古い油が少し残っていたが問題ないようである。)


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(写真下:ヘット部分を取り外す。上から順番にノズルを外し、ノズル取り付け台とヘットを取り外す。大きな致命傷は無いようであるが、取り付けナットが、過去に取り付けた際に六角の角が傷ついたようなのでナットを全て取り換えることにした。)

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(写真下:ピストンの入った本体ジャケットには錆があるものの材質を食い込むほどの痛みはなく大丈夫と判断する。給油器からの銅管の痛みがあるので何本かは交換修理する。)

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(写真下:これは2サイクルのため、クランクで一時圧縮して、ピストンが下降し、一時圧縮空気がシリンダー内に流れ込むという最初に空気が入るエアーバルブなので、ここにゴミがないように清掃しておかないと空気が漏れることになる。)

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(写真下:各パーツ類は外し、給油器からの給油銅管の痛みもあったため、一部取り換える。排気消音機(マフラー)の取り外しをする。外側の穴は冷却水が巡回するようになっている。これによって消音効果もある。)

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(写真下:クレーンを使用して、ピストンを引き抜く。油が切れているため、ピストンの頭に油を注ぎながら、ゆっくり引き抜く。その後ライナー本体の取り外しをする。大きな致命傷はないようである。)

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(写真下:ピストンのリングも油が切れており、ピストンと一体化していたが、時間をかけて取り除き無事きれいに整備ができた。スプリングのついた部品はピストンピンに入れてあり給油器からのピストンピンにオイル給油部品。)

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(写真下:ホイールの付いた下台を木台から外して一度クレーンにて吊り上げて、鉄材で作る台の寸法を計測して台の製作に入る。)

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(写真:組み立て作業に入ります。ピストンリングの清掃にはリングをおらない様に時間をかけて清掃する。ひどい摩耗も無く新品に近いぐらい良い状態。ライナーは少し錆が来ているところをテーパーにて錆を落として組付ける。)

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(写真下:ライナー本体を取り付けして、ピストンをクレーンにて差し込む。2サイクルなので前後の向きを間違えない様にゆっくり差し込みして、ロットをクランクに取り付けする。)

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(写真下:ピストンを差し込んだところで、各部品を取り付ける前に最初下塗りしてつやのない黒色で塗装してみることにした。)

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(写真下:注油器を取り付け、プランジャーポンプも取り付けて、手動にて燃料の噴射状況を確認しておく。ニップル類の取り付けから少しの燃料漏れをなおす。)

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(写真下:ヘット取り付け焼玉部とノズル台ヘット部の各部品を取り付ける。)

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(写真下:消音器マフラーも取り付ける。各部品の合わせパッキンは新品に取り換える。消音器マフラーも艶消し黒色で塗装しジャケット部のニップルは作り換える。)

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# by kobas2006 | 2021-09-05 21:30 | 船舶用焼玉エンジン復元の紹介
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冊子作製のお知らせ
『日本製焼玉式と瓦斯発動機のメーカー名』


 今まで発動機製造メーカー名の記録は取りましたが、

今回古い瓦斯発動機と

焼玉機関(陸用と船舶用)のメーカー名を調査しましたところ

252社あり写真入りで冊子作りました。

興味のある方は下記にご連絡下さい。


森下泰伸 090-4975-2362




冊子作製のお知らせ 『日本製焼玉式と瓦斯発動機のメーカー名』_d0079522_00070888.jpg


# by kobas2006 | 2021-02-02 00:12 | 模型工房ニュ~ス!

【イベントのお知らせ】

昭和レトロカ万博2020 開催



開催場所:大阪市此花区北港緑地2-1

     大阪・舞洲アイランド広場  

開催日時:1220日(日) 9:30から15:30


メインはレトロカですが、

発動機は10馬力焼玉エンジンと

ヤンマーディーゼルの初期タイプ2台が出展します。

コロナウイルスの影響もあり、

マスク着用で、間隔を取り、発動機の周りはカラーコーン設置します。

ぜひお越しください。


# by kobas2006 | 2020-11-04 00:50 | 【予告】発動機イベント


         【愛媛新聞に掲載2020.10.25】
宇和島水産高校(愛媛県宇和島市)の生徒達の手によって
 焼玉エンジンが復活!
ーNPO法人「発動機遺産保存研究会」が協力ー

~復活までの軌跡編~

 宇和島水産高校に保存されたいた焼玉エンジンは、

徳島県の山本鐵工所で1957(昭和32)制作された12馬力です。

 宇和海で操業する巻き網漁船の主エンジンとして使用されていました。

 1963(昭和38)に当校に設置されたようですが、

詳細は分からず、その後動いた事実もないようです。

 そして今回、当校海洋工学コース全員が所属する海洋技術研究部の活動で、

3年生の課題研究テーマとして、復元することになりました。

 20174月から取り組みを開始し、20209月に起動を確認、復活を成し遂げました。



 【 焼玉エンジンの歴史 】

 明治39年、スエーデン製注水式焼玉エンジンが輸入されて、

 その後も米国製なども輸入された。

 ただ、当時は焼玉の材質の問題で割れてしまうことがあり、

 また注水式のためシリンダー内部の錆などの

 問題があった。

 大正時代中ごろより、無水式焼玉エンジンが米国やスエーデンなどから輸入されて、

 これらの問題を解決が解決されたため、

 日本国内のメーカーが同じタイプの焼玉エンジンの制作に乗り出した。

 日本国内では1965(昭和40)まで制作していたようである。

 その後性能の良いディゼルに変わっていった。


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(写真下:焼玉エンジンの気になるところは、ホイールが手で回らず非常に重いこと。

 ピストン引き抜き、ピストンとライナー部の接地面がきつくなっている

 この面を修復作業をしなければならない。)


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写真下:一年目、シリンダーのあたりの部分を0.01ぐらいですり込み、
 毎回ゲージにて測定する。2サイクルは、ソーキポート部分が
 長年放置しておくと、材質の問題もあって変形して、

 ピストンがスムーズに動かなくなるため、あたりの部分を削る。

 これには時間がかかってしまいました。)


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(写真下:2年目で本体の台をコンクリートでやり直すなどの作業する。

 当校には天井クレーンが設置してあり、この点は非常に楽だった。

 エンジンを分解・清掃・油圧力試験・冷却水タンク回りと燃料配管

 プランジャポンプをオーバーホールなど

 一部作り直しもある。燃料噴射試験も何度もする。)


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(写真下:生徒さん達でマフラー清掃。ここも冷却水が巡回しているので、

 水漏れのないように錆を落として、ボンドパッキンなどで整備する。)


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(写真下:3年目はコロナウイルスの影響で6月まで出入りできない状況でした。

 7月から最後の仕上げ整備に取り掛かる。

 潤滑油ポンプオーバーホール・燃料噴射弁の再度オーバーホール並び噴射試験・

 冷却水の少し水漏れの修正・重油バーナの修理点検などする。)



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(写真下:8月、再度各部の点検し、焼玉の焼き金を、重油バーナが
 出来てなかったため、とりあえず、プロパンバーナで焼いてみる。
 エアー掛けが出来ておらず、ディゼルエンジンにてベルト掛けで
 回してみる。開始後約10分ほど回す。冷却水の水漏れもなく状態良好。)


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(写真下:復活お披露目会の挨拶の模様。生徒さんたちで、

 本体をつやなしの黒色で塗装し、

 始動用のエアー設備もでき、重油バーナも完成。

 10月に、宇和島市内の協力者などもお世話になった方々をお招きして運転

 お披露目会が行われた。

 試運転では、重油バーナで焼き金を焼きエアー掛け始動させる。)


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作業を通じた生徒さんたちの表情がとてもいいですね。

みなさん、お疲れ様&おめでとう!





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