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 【産業遺産 ためになる歴史小話】
              
  ディーゼル機関の歴史
                                  解説:森下泰伸


 ディーゼル機関は、ドイツのルドルフ・ディゼル(Rudolf Diesel)博士が作り上げたものである。

 彼はすでに10代のころ、ひとつのヒントを得ていた。
 それは、東南アジアに位置するスマトラ島で、古代原住民が使用した「火お越し」の道具である。
 スマトラ原住民の「火お越し」は、火打石とは違い、穴をあけた木製筒の先端を栓でふさいで、もぐさを使用して、これに火を付ける。
 幅数ミリの木製の押棒を、手で勢いよく押し込むと、乾燥したもぐさに瞬時に火を付けることができた。

 ディゼル氏がヒントを得たのは、この急激に圧縮して着火させる方法だった。

 彼はやがてカルノ理論を学び、蒸気機関と内燃機関の研究を進めていく。
 そして1893年、スイスのズルツァー滞在中、ある機械会社でディーゼル機関の原型を試作、失敗を繰り返しながら、1897年遂に完成させる。

 初期の圧縮着火は、コンプレッサーによって燃料を噴射した。
 (ボアxストローク 220x400)
 燃料噴射に20馬力コンプレッサーを使用し、始動時にも圧縮空気で回す仕様であった。
 
 1897年2月17日が、ルドルフ・ディーゼル氏によるディゼル機関「発明の日」であるとされる。
 この時代のディゼル機関は大型で、その後改良されながら現代に至り、小型化していく。

 一方、日本では、同じ頃(明治26年から30年頃)、『新潟鐵工所』が創業、『日本石油』が英国よりトラスチー機関を輸入、次いで海外で石油発動自転車が製造され、輸入されている。
 また、東洋で初めて、隅田川及び横浜港内で石油発動機船が試乗され、『池貝鐵工所』はスチームエンジンを製作、『伏田鐵工所』は英国製ケンチング・ナショナル・クロスレー型の瓦斯機関を摸作して製造し、発動機を作り始める。
 こうして、大正時代までに、「殖産興業」の国策のもと、国内でも発動機を製造する会社が、急速に増えていくことになる。

 
by kobas2006 | 2009-12-19 15:09 | 【ウォッチ!】日本の産業遺産

         ~珍しいクボタ發動機(石油発動機)をご紹介~

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             (写真上:クボタ發動機(大正10年))

 ご覧の写真は とても珍しいクボタ發動機です。

 これは、大正11年に製造販売が開始された一号機より前に作られた古典的機種で、同機種の現存は、極めて少ないと思われます。クランクカバーは、割れてありませんでした。
 保存状態が大変良く、錆等はありません。

 大正時代に作られたクボタ發動機のマフラーは、止めのビスが出目金のように張り出しているのが特徴で、純正品であるか否かを見極められます。

 本機種にはキャブレターらしきものはなく、燃料を直接吸い込む仕様で、ロッカアームが曲がっているのが特徴です。
 この曲がったロッカーアームは、一号機からスマートな一直線型に変わります。

 ホッパーに『販売店杉山商店』と書かれたプレートがあり、このプレートはF型クラスまで、昭和初期頃の機種に付けられています。

 当初、クボタ發動機は、販売店であった杉山商店(当時)の勧めで、アルファー發動機(アメリカ)をモデルとして製造されたため、初期型発動機となる本機種には、アルファー發動機に似通った特徴がいくつか見受けられます。

 ホイールにクボタ独自のガバナーが付いています。
 写真では見えにくいのですが、ガバナーからの連結シャフトがキャブ横まで付いて、その横にプッシュロットがあります。
 
 マグネトーは、ボッシュ製(アメリカ)です。
 当時は、まだ国産マグネトーがなく、輸入品マグネトーが使用されました。

 後に出た「澤藤マグネトー」には、ボッシュ製マグネトーに似たものがありますが、これに使用されているコイルは、巻き換えが難しいと言われています。

 次は、このコイル巻きに挑戦致します!
 お楽しみに!

by kobas2006 | 2009-03-16 18:25 | 【ウォッチ!】日本の産業遺産
  【勉強会】
        小林式木炭ガス発生機と木炭ガス発動機
           ~昭和の産業遺産を卒論へ~


 去る2008年11月15日(土)16日(日)、卒業論文に励む、西日本工業大学機械システム工学科池森研究室の4年生3人が、小林式木炭ガス機関の実地調査を行うため、現在実働可能な唯一の機械を所有する、香川県の杉山さん宅を訪れることとなり、不肖私も現地に馳せ参じました!

   ~小林式木炭ガス機関とは~ 
 小林式木炭ガス機関は、小林式木炭ガス発生機と小林式木炭ガス発動機で構成され、昭和初期から終戦直後まで、国内外で活躍したガス機関です。
 小林式の特徴は、木炭ガス発生機で木炭を不完全燃焼させて、多量の水素ガスを発生させ、その爆発力を利用して、12馬力以上の中~大型発動機を駆動させたことで、当時稀な威力を持つガス機関として、農林省から補助金付として認定を受けました。


 初日15日は、学生さんたちが実際に、小林式木炭ガス機関を木炭で稼働させました。
(写真下:所有者杉山さん(手前)のご指導のもと、燃料の木炭をハンマーで4~5センチに割る、学生さんたち。)
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 純度の高い良好な木炭ガスが出始めたのを確認後、木炭ガス発動機を見事に始動させ、安定運転に成功しました!
 私も、前回日本機械学会で発表した内容を踏まえて、ご指導しながら、いっしょに勉強させて頂きました~。


 二日目16日は機関を分解し、寸法と構造の調査を行いました。
(写真下3枚:小林式ガス発生機を分解調査中。四国在住の発動機愛好家の方々が応援にお越しくださり、調査にご協力くださいました。本当にありがとうございました!)
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(写真下:高校2年生の藤岡君と御祖父のお二人が訪れて下さいました。杉山さんが新しくレストアされた、「小林式石油発動機」12馬力を、ガソリンで駆動させて頂きました。)
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 せっかくなので、合間に、私も小林式発動機『KOBAS12馬力』1/4スケールを出して、小林式木炭ガス発動機とツーショット写真を撮りました~。
(写真下:私が生まれるずっと前に、父や祖父が作った「小林式木炭ガス発動機」と私。)
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(写真下:小林式ガス発動機(奥)と小林式発動機『KOBAS12馬力』1/4スケール(手前)。)
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 この日、応援にお越しくださった発動機愛好家のお一方が、小林式発動機『KOBAS12馬力』1/4スケール 組立キット をご購入くださいました。
 「(小学校高学年になる)孫の男の子といっしょに組み立てたいので、クリスマスまでに納品を。」とおっしゃり、組立キットをお孫さんへのクリスマスプレゼントにして下さるなんて、本当に光栄で、とてもうれしいです!
 ありがとうございました!!
 世代を渡り、技能技術の伝承さながら、こうして「ものづくり」の楽しさとすばらしさが伝わっていくことこそ、目に見えない最上のプレゼントになってくれるのではないかと思います。
 『本当に大切なことは、目では見えない、心の目で見なくちゃ。』というセリフが子供の絵本にあったように思いますが、それこそを、当工房が伝えていくことができたら・・・、と願っています。



 杉山さんには、今回も快く調査にご協力いただいた上に、おいしいご当地讃岐うどんなどもご馳走になり、本当にありがとうございました!

 西日本工大学生諸君は、しっかり実地実測調査ができましたでしょうか?
 卒論発表、楽しみに視聴にいきますので、しっかりがんばってくださいね!!
by kobas2006 | 2008-11-20 11:04 | 【ウォッチ!】日本の産業遺産
~(3)認定「機械遺産」 ヤンマー小形横形
  水冷ディーゼルエンジン『HB形』が登場~



 2007年11月11日(日)開催、「第23回つくで祭り」協賛『つくで高原!発動機祭り!』(愛知県新城市作手)では、2007年夏、日本機械学会で認定「機械遺産」8号となった ヤンマー小形横形水冷ディーゼルエンジン『HB形』 の同型が、運転・展示されました!
 (同じく、2007年夏の日本機械学会では、我らが池森寛教授(西日本工業大学)も表彰されましたね。おめでとうございます!!)

 所有者は、この発動機祭りの運営責任者・森下泰伸氏(発動機遺産保存研究会所属、当工房エンジニア)です。
 現在、日本国内に3・4台しか残っていないと言われる初期同型うちの、本当に貴重な一台ですが、森下氏のオーバーホールにより、ちゃんと駆動します。

(写真下:ヤンマー小形横形水冷ヂーゼルエンヂン『HB形』、5馬力/550回転。)
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 解説/所有者・森下泰伸氏:
『このヤンマー小形横形水冷ヂーゼルエンヂン『HB形』は、昭和8年、山岡發動機工作所(現ヤンマー株式会社)が開発した、世界初の小型ディーゼルエンジンです。
 昭和7年3月、当時の山岡社長自ら、ドイツに赴き、メッセ(見本市)でMAN社(当時)のPR映画でディーゼルエンジンの安全性、燃費の良さに心を打たれ、帰国後開発をはじめますが、すでに国産化が進んでいた船舶用の大型ディーゼルエンジンを、農業用に小型化する開発は困難を極め、試行錯誤の果てに、昭和8年12月23日、この横形5馬力HB形の完成に至りました。
 そして、ここから、国産小型ディーゼルエンジンの歴史が幕を開け、後に、同社は同日を「ディーゼル記念日」と定めたほど、画期的な開発となりました。』

 

~山岡發動機工作所と小林兄弟鐵工所の接点~

 森下氏の解説を伺い、歴史を感じました。

 昔、私が父から聞いた話ですが、私の祖父は取り引きの関係で、よく大阪へ行っていたそうですが、あの当時、大阪の山岡發動機工作所の方が、ときどき広島の小林兄弟鐵工所にも来られていたそうです。(すでに呼称は、「ヤンマー」さん、だったそうです。)
 昭和8年といえば、「小林式発動機」は最盛期を迎えるころで、父はちょうど広島県立工業学校を卒業後、家業を継ぎ、木炭ガス発生炉と木炭ガス発動機の開発製造に邁進しはじめたころ。
 当時国内の燃料不足から、山岡發動機工作所は、燃費の良い「ディーゼル」の開発を、祖父や父は、エコロジーな木炭を利用した「小林式木炭瓦斯発動機」の開発を進めていた時代だったんですね。
 「小林式木炭瓦斯発動機」は、昭和11年以降、国家性能試験をパスして「農林省補助金付」となりますが、戦後、木炭ガス発動機自体が、時代のニーズに合わなくなり終焉を迎え、反対に小型・軽量化に成功したディーゼルはますます盛んになっていったわけですが、いつの時代も、歴史の交錯のなかで、そういう交差があるものです。
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(写真上: 現存する「小林式サクションガス機関」。左が『小林式木炭瓦斯発生機』、右が『小林式木炭瓦斯発動機』。写真提供/西日本工業大学)


~日本機械学会認定「機械遺産」~ 

 2007年、日本機械学会の認定「機械遺産」となったもののなかには、最近の鉄道ブームやSL模型で人気のある「230形233号タンク式蒸気機関車」、「東海道新幹線0系電動客車」をはじめ、マツダの「10A型ロータリーエンジン」、「ホンダCVCCエンジン」など自動車好きの私もよく知っていますが、一番心を惹かれたのは、近代の産業機械
 近代の造船設備だった「小菅修船場跡の曳揚げ装置」を見ると、明治時代、祖父が大阪で修行をしたという造船所が思い起され、明治8年に作られた「足踏旋盤」を見ると、祖父が、大阪の造船所で修行後、故郷へ持ち帰り発動機の修理から始めたという、「手回し旋盤」に重なります。
 実際に、今回「つくで高原!発動機祭り!」の帰りに、私は犬山市の博物館明治村へ寄り道して、この「足踏旋盤」と、明治時代の「手回し旋盤」を見てきました。

 こうした貴重な「機械遺産」を、後世へ遺していくことは、本当にすばらしいことだと思います当工房は、「クラシックエンジン石油発動機のミニチュア模型をつくる」という形で、その一端を担いたいと思います。

 みなさん、これからもぜひ、古き・良き・懐かしい機械遺産を、後世へ、遺していきましょう!! 

 

  
by kobas2006 | 2007-11-16 08:09 | 【ウォッチ!】日本の産業遺産

小林喜久子【コバスモデルエンジニアリング代表】元発動機専門メーカーの女性直系子孫が石油発動機エンジン模型を製造販売


by kobas2006