【特集】特殊な回転マグネトーの修理Part.2(澤藤LS-B-1型その①)~KOBASオリジナル 『コイル巻線機』~


  【KOBAS「コイル巻線機」特集】

            ~“特殊”回転マグネトー修理編 Part.2~

          ~澤藤マグネトーLS-B-1タイプ用コイルを巻く~
                      その①


 当工房では、2008年12月に完成したKOBASオリジナル「コイル巻線機」を利用して、これまでに、当工房ミニチュア石油発動機KOBAS用コイル(連載1)のほか、年代物・実機の石油発動機の『回転マグネトー』(連載2)、『箱型マグネトー』 (連載3)、『特殊な回転マグネトー(澤藤BS-1)』(連載4)の修理方法をご紹介してまりました。
 今回は、『特殊な回転マグネトー』Part.2としまして、「澤藤マグネトーLS-B-1型」の修理について、ご紹介いたします。


(写真下:澤藤マグネトー各種。(左奥)BS-1型・コイルが回転するタイプ。(左中)LS-A-1型・コイルが回転するタイプ。(左前)LS-B-1型・コイルが回転するタイプ。(右側)DS-A-1型。)
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  ~澤藤マグネトー歴史概略~
 1908年(明治41年)澤藤電機創業。
 創業者澤藤忠藏氏は、大正時代からボッシュマグネトー等の修理を始め、大正末頃、研究のために渡欧する。
 1929年(昭和4年)帰国後、試作を重ね、日本製マグネトー第一号(国内初)を完成させる。やがて量産体制を整え、ボッシュ似のハイテンションマグネトー等を製造していく。
 1934年(昭和9年)、LS-B-1タイプの原型となる、コイルが回転する(軸回転型)のマグネトーの製造を開始。(型式US-A-1・LS-1・LS-A-1・LS-B-1・BS-1)
 その後、自動車のダイナモ・レギュレータ生産を開始する。

  <澤藤マグネトー型式 全10種>
  ES-1-F・US-A-1・LS-1・LS-A-1・LS-B-1・NC-1・BS-1・DS-1・FS-1・MB-4

 【解説】
 昔、発動機は始動後、燃焼・ノッキング・自己点火・気筒形状・点火栓位置などにより、様々な不具合が生じやすかった。
 その際、特に重要だったのは点火時期だ。
 4サイクル機関でる発動機は、吸入・圧縮・爆発・排気という工程で、圧縮された混合ガスに点火を行い始動させる。
 そのため、圧縮時に、もし点火による爆発が早過ぎて死点の手前で点火すれば、ピストンが逆押しされ発動機がノッキングを起こし、シリンダーが過熱状態となり馬力低下を起こす。反対に、点火による爆発が遅すぎると、圧縮が低くなり、不完全燃焼を起こす。ピストンの死点位置前後で、マグネトーによる、正確な火花点火が行われる必要があるのである。
 これらのことは、長年課題とされてきた。
 しかしながら、現在各地の発動機運転会場で、こういった不具合の改良に成功したメーカーの発動機にお目にかかることがあり、当時改良の努力が続いていたことが伺える。 
 


澤藤マグネトーLS-B-1型 分解図
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 ボッシュとは形状が違いますが、コイルが回転するタイプの発電子回転型です。
 電気鉄板を数十枚重ねてH型に作られてあり、これで過電流を防ぐことが可能です。
 コンデンサーは、古いものは必ず交換しましょう。一般に0.07~0.25マイクロ・ファラットが良いでしょう。

澤藤マグネトーLS-B-1型 コイルの解体
(写真下:コイルの二次線をバッサリ切る。内部はカビがはびこっている。)
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(写真下:続いて一次線も解体する。鉄心は錆びもなく状態は良い。)
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澤藤マグネトーLS-B-1型 断続機(カム)の分解
(写真下:断続機(カム)を分解した状態。)
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 二次電圧を得るために、一次電流を急激に切ることで、火花により電圧を得る方法があります。
 そのためにも、断続機(カム)が機械的に正確でなければいけません。
 古いポイントは、錆びで固着している場合がありますが、ポイントを回転させてカムを固定します。
 さらに、電気がアースしてしまう恐れがあるため、油などの汚れはきれいに掃除し、乾燥させます。
 また、ポイントの戻り板スプリングが折れている場合は、新品の板スプリングに交換しましょう。


澤藤マグネトーLS-B-1型 新しいコイルを巻く
 マグネトー解体後、KOBASオリジナル「コイル巻線機」で、新しいコイルを巻いていきます。
 最初にH型鉄心に絶縁紙を巻き、新品のエナメル線を巻きはじめます。このエナメル線も、古い時代の物より、品質が良くなっています。
 一次線は200回巻きます。発動機は低速回転なので4段から5段巻きます。(バイク用は、巻き段を変えます。)
次に、二次線を巻きますが、二次線一段目はボビンの端から巻き、上段になるにつれて端を狭くし、巻きつけるようにします。
 上段ほど電圧が高くなっていくので、最後の高圧取り出し口のハンダ付けは、慎重に上手く行います。
(写真下2枚:KOBASオリジナル「コイル巻線機」で、新しいコイルを巻いている様子。)
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 つづきは、その②をお楽しみに~。
by kobas2006 | 2010-07-06 12:18 | 【連載6】澤藤マグネトーLS-B1

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