新聞に掲載!山上の索道から見つかった発動機の復元を紹介
~高知県香美市物部町~
【経緯】
昭和20年代後半から昭和40年代初期頃まで、山の上の集落に物資を運ぶために索道が張られていました。
索道とは、空中に渡したワイヤーを発動機等を動力源として動かし、ワイヤーに吊り下げられた物資等を、山の麓から山の上に輸送した施設のことです。
現在では、山の上の集落も廃家となり、索道も発動機も使われなくなり、そのまま残された状態でした。
その索道があった土地の所有者の方から、「発動機をもらってくれないか」との問い合わせがあり、このたび発動機研究会会員の方が譲り受けることになりました。
そこで、協力して、山上から発動機を運び出し、復元整備することになりました。
発動機は『ヤンマーディゼルエンジンK3型3馬力』です。
今回は、令和4年12月高知県香美市物部町において、山上の索道に残されていた古い発動機を分解し3日がかりで麓まで運び出した様子と、その後令和5年1月から行った復元作業から令和5年6月の発動機運転会で披露された模様まで、一挙にご紹介します。
(写真下:令和4年12月、山上の索道があった場所へ向かう。国道から脇道に入って約6キロぐらい走り、則友川の上流へ向かう。)

(写真下2枚:則友川に沿って雑木林や植林の中を行く。)

(写真下:物部町仙頭地区の小屋までたどり着き、ここからは山の傾斜面を徒歩で登る。)
(写真下:山道登り口にある片屋根の倉庫の上に、ボンネットバスの屋根が乗せてある。錆による劣化はあるものの、穴は開いていない模様。)
(写真下:ここからはこのような山道を登り降りしながら、現地まで行く。)
(写真下:山肌に索道のウインチが見えてきた。昔はこの索道を使って、麓から米やガスボンベなどの生活用品を運んだが、かつてその動力源となったが、ここに残された『ヤンマーディゼルエンジンK3型3馬力』発動機である。発動機には、ボンネットバスの燃料タンクを切り抜いて被せてあった。そのタンクの鉄板が厚かったおかげか、錆などで穴は空いておらず、風雨にさらされていないようである。)
(写真下:風雨よけのボンネットバスの燃料タンクを除くと、発動機は索道のウィンチにベルトをかけたままの状態であった。)
(写真下:さっそく発動機の解体作業を開始。外せる部品は全部外して、運搬しやすいようにできる限り軽くする。)
(写真下:発動機のヘットを外し、アルミ製の燃料タンクも外したところ、当時の重油が少し残っていた。さらに分解していく。)
(写真下:急な斜面の細い道のため、現地調達で立木を良い長さに切り、前後で持って降りることにする。)
(写真下:1日目は、発動機を廃家の石段まで運搬して終わる。)
(写真下:2日目の発動機降ろし開始。ここからは発動機を横移動することになる。急傾斜面で足場が悪く、発動機を手かぎきできる場所ではないため、ワイヤーを張って、つり上げて移動させることにした。)
(写真下:この場所は、山肌がかなりの急斜面のため、発動機を空中移動させる。)
(写真下:ここはかつて茶畑であったそうだが、今になっては伸びきって林の中を移動しているような状態である。)
(写真下:ワイヤーの二度目の張替えを行い、人力で発動機を横引きして移動する。)
(写真下:2日目は、山上の廃家がある佐加野地区の東側まで、横移動することができた。2日目はここで作業を終わる。)
(写真下:3日目の移動開始。3日目は、道路まで降ろす作業となる。足場が良くない獣道のようなところを用心して移動する。)
(写真下:運搬機を山上の行けるところまで上り詰めさせておき、発動機を運搬機に乗せて移動できるところまできた。)

(写真下:周囲は植林や雑木林で、落ち葉などで運搬機が滑りやすい状況。道幅が狭く、クワなどで脇道を掘り、道を直しながら、運搬機に乗せて発動機を降ろしていく。)
(写真下:道路までの最後の急斜面を降りる。前方でロープを引っ張り、援護しながら運搬機を降ろしていく。)
(写真下:やっと道路に発動機を降ろすことができた。運搬機でそのまま軽トラックに乗せる。こうして山上からの発動機降ろし作業は、無事に完了した。)
(写真下:令和5年1月、いよいよ発動機の復元に取りかかる。本体からホッパーを外して、その他の部品も全部外していく。)
(写真下:各部品を外して、錆と油汚れを落として掃除をし、整備する。) (写真下:本体は元の塗装色が残っていたため、それに近い色で塗装してみる。)

(写真下:燃料タンクも掃除して、元の塗装色が残っていたため、それに近い色で塗装してみる。)
(写真下:ヘットを外して汚れを落としから、バルブの摺り合わせを行う。バルブのガタつきもなく良い状態。バルブのガタつきがあった場合は、バルブを丸棒から削り出しして作り直すことも可能。)
(写真下:ピストンを引き抜く。ピストンの状態は良く、リングの張りもあり、部品として良い状態であることを確認する。リングの状態が良くない場合は、リング一式を交換することも可能。)
(写真下:ヘットを取り付けて、圧縮を確認する。ライナーの傷などの致命傷はなく、圧縮の状況は良いと確認する。)
(写真下:燃料タンクのコックのパッキンを取り替える。燃料がコック部分からじわーっとにじみ出たため、3回パッキンを取り替えて、やっと燃料のにじみ漏れが止まる。その後は燃料コックを通常開けたままでも、燃料が一滴も漏れなくなった。)
(写真下:ガバナーカバーとクランクカバーのパッキン類を作り直して取り付ける。)
(写真下:ロッカーアームとクランクカバーを取り付ける。)
(写真下:元々の燃料系部品で燃料噴射状況をテストし確認するが、状態が良くなかったため、部品を取り替えることにした。)
(写真下:燃料噴射状況が良くないため、デリバリ・ノズル・レギュレーター針を新品の部品と交換して、再度噴射状況を確認する。非常に噴射状況が良くなり、そのまま回してすぐにエンジンが掛かるようになる。)
(写真下:吸気カバーの外側のアルミカバーにあった多少のでこぼこを直して取り付ける。マフラーも外側のカバーがなかったため、旋盤でカバーを加工して、取り付ける。)
(写真下2枚:令和5年3月末、発動機の復元はほぼ完成する。木台も作り替る。ヘット前部分から少し油が落ちるため、脂取りの缶を設置する。)
(写真下:令和5年6月4日、晴天のもと、見事に復元した『ヤンマーディゼルエンジンK3型3馬力』発動機のお披露目会を開催することができた。お神酒をかけてから、始動式を行った様子である。当初は、お披露目会を5月に予定していたところ、4~5月は週末に雨が多かったため6月になった。)